愛人契約

足長おじさんを作るコツも教えられてその通りに実践した結果
奧さんが出産を控えて自分の故郷で産みたいとのことだったので、僕は奧さんが出産を終えるまでは自分の実家に帰ってゆっくりすることにした。年末年始に帰ったり帰らなかったりの生活だったので実家でのんびりするのも久々だった。
学生時代には慣れ親しんでいた町だが、成人してからぶらぶらと歩いてみると景色が一変して見えた。居酒屋・パチンコ屋・スナック・風俗など子供には縁のない施設が揃っていて、意外に大人の男性向けの街だったのだな、と認識した。
高校時代の同級生たちとは、今やほぼ音信が途切れている状態だったが、今は皆、大人になって、この大人の街の風景になじんでいることだろう。偶然に入った飲み屋でかつての旧友と再会なんてドラマがあったら面白いだろうなと思った。
そして、何となく何かに導かれるようにふらりと比較的新しめのバーに入ってみると、僕はそこで運命の再会を果たした。その店のカウンターレディが中学時代の僕の初恋の女性にそっくりだったのだ。
彼女は僕のことに気づいていないようで一見さんとして明るく扱ってくれた。僕もまた、面影があると言うだけで彼女が初恋の人と同一人物かの確証も得られず、その場は従業員と客というそれ以上でも以下でもない関係のまま別れた。
ドラマチックではないか。10年越しに初恋の人と再会して愛が燃え上がる。ただ僕ももうすぐ1児の父なので彼女と所帯を持つことは叶わず愛人契約をする。家に帰ればよくできた妻と子供が、そして地元に帰れば目の覚めるような美しさの愛人契約した彼女がいる。そんな男冥利に尽きる生活を妄想したりもしてみた。
「そう言えば、お前、確か〇〇のことが好きだったよな?彼女、今どうしているか知ってるか?」
郷愁に駆られて高校時代の親友で地元のスーパーに勤めているヤツと連絡を取り10年ぶりに再会して思い出話に花を咲かせているとそんなことを話してきた。
知ってるも何もそこのバーで働いているんだろう?と言いたい気持ちを堪えて知らないふりをして聞いてみた。
「卒業してすぐに△△と結婚したんだよ。高校時代からこっそり付き合ってたようだな。今は3人の子持ちでうちの店にもよく買い物に来るよ」
ああ、バーの女性は別人だったか。ま、そんなものだよなと思いながら、僕は頭の中に描いていた愛人契約計画を破り捨てた。
お金の無償支援
金づるの女